ボイシングとは?ギター弾き語りを洗練させるのに超重要なフォーム選択について解説

ボイシングについての説明をした図

ぎたすけ

ボイシングってコードでの音の配置のことだよな?ギター伴奏に関係あるの?

たけしゃん

弾き語りではボイシングは超重要だね。前半ではボイシングの理論的な話をして、後半は弾き語りの実戦的な話をしていくね

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たけしゃん

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プロフィール

ギター弾き語りのシンガーソングライター。長年の音楽活動や音楽の仕事で得た知識・経験を基にブログを書いています。
雑誌の音楽記事執筆、音楽専門書の執筆(工学社)、nana公認クリエイター、IPC VOICE STUDIO公認ボイストレーナーです。
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ボイシングとは

ボイシングについての説明をした図

ボイシングとはコードにおける音の並びや間隔を決めることです。

例えば、Aメロでは落ち着いた雰囲気で進めたいのでコードの音程差が激しいと雰囲気が合わないんですよね。

そこで、コードの構成音の配置を変更して調整するわけですね。

高低差があるC→Amのコード配置
高低差をなくしたC→Amのコード配置

結構違いますよね。Aメロなど落ち着いた雰囲気だと明らかに後者が良いです。

一方で雰囲気をガラッと切り替えるときはあえて跳躍感の出るボイシングを選択したりもします。

このように同じコードでも構成音をどういった配置にするかは伴奏アレンジでは非常に重要なのです。

クローズドボイシングとオープンボイシング

クローズドボイシングとオープンボイシングの違い
クローズドボイシング音の配置が1オクターブ以内に収まる
オープンボイシング音の配置が1オクターブ以上に広がっている

ボイシングには大きくオープンボイシングとクローズドボイシングの2種類に分かれます。

ギターに関しては、6つの弦を鳴らすこともあり、ほぼオープンボイシングですね。

ギターのコードフォームを音符で並べると1オクターブ以上の配置になっているため、オープンボイシングとなる

6弦と1弦で2オクターブの音域差があるため、普通にコードを弾くと勝手に最低音と最高音で1オクターブ以上の配置になるからです。

ギター弾き語りにおいてはクローズド、オープンなど意識することは基本ないので知識として知っておくだけで十分ですね。

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配置される音の名称

コードの構成音の名称を記した図
トップノート最高音のこと
内声音トップノートとルート音以外のこと
ルート音最低音のこと
外声音トップノートとルート音のこと

コードの構成音にはそれぞれ名称がつけられています。

複数人でボイシングを検討する際などに名称でやり取りすることが多いので覚えておきましょう。

ギター弾き語りでのボイシングにおいてはトップノート、ルート音にこだわってコードフォームの選択をすることが多いです。

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ギター弾き語りにおけるボイシング

AKG P120で演奏を録っているところ

さて、ここからはギター弾き語りに焦点を絞って実戦的なボイシング手法を解説していきます。

弾き語りにおいてはボイシングについて考えることはものすごく大事です。

そして、プロとアマチュアのギター弾き語りで、僕が一番差を感じているのがボイシングなんですよね。

弾き語りにおいては難しいテクニックや複雑な演奏をするわけでないので、伴奏で一番差が出やすいのはボイシングのセンスなんです。

Fender CC-60S Concert ネック前面

今は無料のコードサイトに大半の曲のコード譜が落ちてるし、YouTubeでは動画でコード譜載せてる人がたくさんいます。

しかし、コードサイトもYouTubeに上がってる動画もボイシングについては全く意識されてないフォーム選択が大半なのです。

たけしゃん

まあ、コード自体は解析アプリとか使えば誰でも取得できますが、ボイシングはそうはいかないですからね…
補足

もちろん、中には考慮されてるコード譜を掲載している人もいると思います…!

多くの人がボイシング意識ゼロのコード譜をそのままコピーするので、最も重要であるボイシングの技術が全く向上しないんですよね…。

本章ではここを気を付けるだけで、大分違う…!というところを3点解説していきます。

また、ボイシングにはコードフォームの引き出しが欠かせません。

弾き語りすとLABOでは弾き語りすと向けのギターコード一覧ページを用意してるので、合わせて活用ください。

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ルート音のオクターブを意識しよう

Em7のパッシングディミニッシュでオクターブがあっていない例と合っている例

ボイシングで意識すべき点、1つめはルート音のオクターブです。

ギターという楽器の特性上、意識しないとルート音の高さがデコボコになりがちなんですよね。

例えば、4弦の開放弦の「レ」と6弦の開放弦の「ミ」は隣の音と思いきや、1オクターブ近く離れてます。

4弦の開放弦のレと6弦の開放弦のミは1オクターブ近くはなれている

ピアノだと1オクターブとなると距離が大分離れるので、ボイシングに大きく影響することは一瞬でわかります。

しかし、ギターだと弦が変わるだけでフレットのポジションは一緒なので、あんまり意識しないんですよね。

主にルート音の高さを意識すべき場面はルート音が半音もしくは全音でキレイに繋がってるケースです。

ルート音が滑らかに上昇していく楽譜

よくあるコード進行例では「D→D#dim→Em7」という、いわゆるパッシングディミニッシュと呼ばれるコード進行があります。

DとEm7の間にD#dimを入れることでルート音が半音上行していく流れができます。

このときにローコードのフォームで構成すると、Em7で急にルート音がオクターブ下になってしまいます。

D-D#dim-Em7のコード進行とギターコードフォーム。最後のEmでルート音がオクターブ下になっている

これをルート音がキレイに半音上行になるようにボイシングを変えると、下記のフォームになります。

D-D#dim-Em7のコード進行とギターコードフォーム。ルート音が半音上行のキレイな形になっている

音を聴き比べると、ルート音のオクターブが揃っている後者のほうがコードの解決感があって心地いいですよね。

オクターブがあってない例でもコード進行として問題はないですが、音の違いは理解した上でどっちを選ぶか考えるのが重要です。

例えば、星野源さんはパッシングディミニッシュでのルート音は徹底して揃えてますね。

コードを転回してルート音を滑らかにする

G→Cadd9→Dsus4→Em7のコード進行を変えてルート音を滑らかに繋ぐ

続いてはコードの構成音は変えずにコードを転回させることでルート音を滑らかにする手法です。

上図の題材では冒頭のGを転回してG/Bに変化させています。

GをG/Bに変えることでコード進行のルート音が「B→C→D→E」と階段式で上がっていく流れが作られます。

音の違いを聞き比べてみましょう。

G→Cadd9→Dsus4→Em7のコード進行とギターコードフォーム
G/B→Cadd9→Dsus4→Em7のコード進行とギターコードフォーム

結構雰囲気変わりますよね。G/Bに変えると滑らかな感じが出ます。

また、この紹介例ではEm7のルート音の高さを変えています。Gから始まる前者は6弦ルート。

G/Bから始まる後者は4弦ルートにしています。

G→Cadd9→Dsus4→Em7のコード進行を変えてルート音を滑らかに繋ぐ

これは前段で解説したルート音のオクターブを揃える手法ですね。

しっとりといく場合はルート音の高さは揃えたほうが滑らかなのでEm7を4弦ルートにすると効果的です。

石崎ひゅーいさんがTHE FIRST TAKEで花瓶の花を演奏されてる動画では、上図のコード進行(4カポ)でEm7は4弦ルートを選んでましたね。

花瓶の花(THE FIRST TAKE)/石崎ひゅーい(YouTube)

花瓶の花のコード譜(Uフレット)

しっとりといく楽曲だとルート音の高さが大きく変わると、悪目立ちしたりします。

こういった細かいところでの音の配慮が弾き語りだと大きな差になってくるんですよね。

トップノートを滑らかにする

ギターコードをローコードからハイコードに変えてトップノートを階段式にする

最後はトップノートを滑らかにするボイシングですね。

トップノートの調整も弾き語りでは、ものすごく重要です。

下の例ではハイコードに変えたボイシングのトップノートはキレイに下降するラインが作れています。

ギターのコードフォームを変えてトップノートをきれいな下降型ボイシングに変えた

ちなみにルート音もローコードはガタガタですが、ボイシングを変えたハイコードではキレイな下降ラインになっています。演奏音で聴き比べてみましょう。

Fmaj7→Em7→Dm7→Cmaj7のローコードのギターコードフォーム
Fmaj7→Em7→Dm7→Cmaj7のハイポジションのギターコードフォーム

大分、印象変わりますよね。

ハイコードで構成された音声はコードがキレイに下降しているので滑らかで聴きやすいです。

特にシティポップなどの循環コードをひたすらループする楽曲だと、こういったボイシングの選択が伴奏のクオリティを決定づける要因となるので気を付けましょう。

ちなみにハイコードはルート音やトップノートの調整がしやすいのでボイシングでは重宝します。

バレーコードが増えて苦手意識が強いと思いますが、やはり必要なので徐々に慣れていきましょう。

 

ボイシング まとめ

本を机に置いて開いてる写真
  • ボイシングとはコードの配置や音の間隔を決めること
  • 弾き語りにおいてはボイシングのセンスが伴奏のクオリティを決める大きな要因となる
  • まずはルート音とトップノートを意識してみよう

ぎたすけ

ボイシングって難しいイメージだったけど、ルート音とトップノートだけ考えるなら割といけそうだな

たけしゃん

まずはルート音とトップノートで十分だよ!そこを意識すると次第にコード全体も意識するようになるからね

ボイシングについての解説でした!

ギター弾き語りにおいてはめちゃくちゃ大事な要素です。

しかし、その割には軽視されがちなんですよね…。悲しい。

なお、ボイシングの勉強をするにはプロアーティスト本人が監修しているギタースコアを買って完コピするのが有効です。

僕のおすすめは秦基博さんの「evergreen」ですね。

ちなみに秦さん本人もデビュー初期はあまり意識してなかったけど、弾き語りツアーをやるようになってからはものすごく考えるようになったとインタビューで仰ってました。

音楽理論講座 一覧

第1章 音や楽譜の読み方を覚えよう

第2章 キーやスケールを理解しよう

第3章 コード進行のバリエーション

第4章 ノンダイアトニックコードの導入

第5章 応用的な音楽理論の活用

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