声が出る仕組みを理解しよう

声に関する人間の器官の位置と名称

ぎたすけ

声の出る仕組みなんて考えたこともなかったけど、ボイトレやるのに必要なことなの?

たけしゃん

まあ、知らなくても全然問題はないけど、ボイトレで鍛える箇所とかわかるから知っておいて損はないよ

弾き語りすとLABO ボイトレ講座。第1話は「声の出る仕組み」です。

声の出る仕組み自体は知らなくても歌は歌えます。

ですが、基本的な体の仕組みは理解しておいたほうが色んなボイストレーニングをやっていく上でやる理由がわかってしっくりきます。

なので、各器官の名称までは覚えずとも、声の出る流れは本記事を読んで覚えておきましょう。

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この記事の著者
音楽ブロガーたけしゃん

ミュージシャン

たけしゃん

tkshan

プロフィール

ギター弾き語りのシンガーソングライター。長年の音楽活動や音楽の仕事で得た知識・経験を基にブログを書いています。
雑誌の音楽記事執筆、音楽専門書の執筆(工学社)、nana公認クリエイター、IPC VOICE STUDIO公認ボイストレーナーです。
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発声の仕組み

肺から空気がくる

声を出そうとすると肺から声帯に向かって空気(呼気)が流れる

声が出る仕組み① 肺から声帯に呼気が流れる
空気で声帯が振動

呼気で声帯が振動して声のもとが生まれる

声が出る仕組み② 呼気で声帯が振動する
声帯の振動音を共鳴させる

声帯の振動で生まれた声のもとを声道で共鳴させていく

声が出る仕組み③ 声帯の振動で生まれた声のもとが声道を進んで共鳴していく
声が生まれる

声道で共鳴した音が声として口や鼻から出る

声が出る仕組み④ 鼻腔・口腔で共鳴された音が声として口や鼻から出る

ぎたすけ

声って意外と色んな仕組みが働いて生まれるんだな

たけしゃん

そうなんだよね。だから息の力だけではほんとに大きな声って出せないんだよね

ざっくりとした声の出る仕組みは上記の通りです。

「腹から声を出せ」とはよく言うものの、声自体は声帯の振動と声道での共鳴で作られるものでお腹とは直接的には関係ありません。

補足

声道は声帯で生まれた声のもとが声になるまでに通る道の総称を指す

よって、ボイストレーニングは平たく言うと

  1. 声帯をいかに効率的に振動させるか
  2. 声のもとをいかに効率的に共鳴させるか

この2点を突き詰めていくことになります。

そこに声色、歌いまわしといったボーカルテクニックを載せて歌という表現を成立させるわけですね。

ここからはもう少し細かく、各器官の名称や役割を見ていきましょう。

 

声に関わる器官の名称と役割

声に関する人間の器官の位置と名称

続いては声に関する体の器官を掘り下げて解説していきます。

まずはザックリと各器官の役割を表でまとめたので、見てみましょう。

器官名役割
声に関わる体の器官 鼻腔
鼻腔
鼻の中の空洞
主に声の素を共鳴させる役割
声に関わる体の器官 硬口蓋
硬口蓋
口の中の上部を口蓋と呼び
その前方部分を指す
声の素を共鳴させる
声に関わる体の器官 軟口蓋
軟口蓋
口蓋の後方部分
鼻腔と口腔の境
軟口蓋の調整で声質が変わる
声に関わる体の器官 口蓋垂
口蓋垂
いわゆる「のどちんこ」
「あ゙ぁ」といった声は
口蓋垂を震わせて出している
声に関わる体の器官 咽頭
咽頭
声帯のやや上にある
食物や空気の通り道
声の素を共鳴させる役割
声に関わる体の器官 声帯
声帯
2枚のヒダで左右に分かれる
呼吸時は2枚が開いており
発声時は閉じて空気振動する
声に関わる体の器官 喉頭
喉頭
咽頭と器官の間にある部分
声帯は喉頭内に入っている
周囲の筋肉で位置を動かせる

色々あって、覚えられないですよね…(笑)。

この中から発声において重要となる「声帯」と「共鳴腔(鼻腔・口腔・咽頭腔・喉頭腔)」を掘り下げて解説していきます。

声帯

呼吸しているときの声帯と発声しているときの声帯
声帯を上から見たイラスト

声帯は喉頭の中にあって、左右に分かれた2枚のヒダを指します。

呼吸をしているときは開いており、発声するときは閉じています。

そして、閉じた状態の声帯に空気があたることで振動して音になります。

声帯を閉じているところに空気が当たって振動する

「声帯が閉じて、空気が当たって振動して声になる」とだけ聞くとシンプルですよね。

ですが、声帯の閉じ具合、声帯の張り具合、空気を当てる強さなど…色んな要素で出る音が変わります。

思った通りに歌うためには、ものすごく細かい声帯のコントロールが必要になるわけですね。

声帯で音程をコントロール

声帯は伸ばすと高い声、たるませると低い声が出る
高い声を出す声帯を細く長く伸ばして
声帯の振動速度を速める
低い声を出す声帯を短くたるませて
声帯の振動速度を遅くする

音の高さは振動の速度で変化します。

例えば、楽器のチューニングで用いられる440Hzという数値は「1秒間に440回振動して生まれる音」を指します。

1秒間に220回振動する220Hzの音は440Hzより大分低くなります。

440Hzの音

220Hzの音

声も一緒で声帯の振動が早くなれば高い声になり、振動が遅くなれば低い声になります。

そして、振動を早くするには声帯をピンと細く伸ばし、遅くするなら声帯をたるませるわけです。

ちなみにギターの弦も仕組みは一緒で高音弦は細くピンと張ってあり、低音弦は太くやや緩めに張ってます。

コンパウンド弦のMartin MA130Sは弦が白い
ギター弾きはギターをイメージすると色々わかりやすい

この声帯の伸び縮みのコントロールが上手くなると音程コントロールも上手くなります。

また、声帯をピンと伸ばす力が鍛えられると高い声も楽に出るようになってきます。

声帯での音量調整

声量を決めるのは「息の圧力」「声帯の閉鎖度」「共鳴効率」の3つ

声量を決める3つの要素

  1. 息の圧力
  2. 声帯の閉鎖度
  3. 共鳴効率

声量は上記の3つの要素で決まります。

大きな声を出すために「息の圧力」「共鳴」が重要というのは多くの人が理解していますが、「声帯の閉鎖度」が重要であることは意外と認識されていません。

声帯の閉鎖度が弱いと、息の圧力を増やしても息がスカスカ抜けていくだけで声帯振動にあまり寄与しません。

声帯閉鎖度が弱いと息の圧力を強めても声は大きくならない

そして、声のもとが小さいと共鳴させても小さいので、声量を上げるには声帯の閉鎖度を高めることが重要になってきます。

ぎたすけ

小さい人でも声がすごく大きい人がいるのはそういった理由なんだな

たけしゃん

そうだね。赤ちゃんの泣き声とか大人より数段大きいしね

そんなわけで、ボイストレーニングでは声帯の閉鎖度を高めたり、自由自在に調整するためのトレーニングがメインになってきます。

共鳴腔

共鳴腔は鼻腔、口腔、咽頭腔、喉頭腔の4つで構成されている

共鳴腔とは「鼻腔」「口腔」「咽頭腔」「喉頭腔」の4つの空洞を総称したものです。

声帯から生まれた「声のもと」を共鳴させて、音を大きくする役割を担います。

また、共鳴腔の空洞の形状や響かせるバランスなどで声色が大きく変化します。

共鳴腔を広げる声の響きが強くなる
声量が大きくなる
共鳴腔を狭める細い声になる
声量が小さくなる

ボーカルは共鳴腔を利用して音色を大きく変えたり、ダイナミクスを作ったりします。

モノマネとかで色んな声色を使い分けている人も声帯や共鳴腔の使い方が上手いからできることなんですね。

ぎたすけ

なるほど…。だからモノマネ芸人さんってみんな歌上手いんだな

たけしゃん

そうなんだよね。モノマネ自体、声帯と共鳴腔のコントロールが相当上手くないとできないからね

共鳴腔は周りの小さい筋肉を使ってコントロールできるので、色んな声色を出すボイストレーニングを通して鍛えていきます。

まずは響かせる場所を意識して、音色が変わることを確認するところから始めると良いですね。

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