アコギのナット幅とは。ギターのネックの太さによる違いを解説

アコースティックギターのネック部分を斜め横から撮った

ぎたすけ

ナットってギターヘッドとネックの間のパーツだよな?その幅が何か関係あんの?

たけしゃん

ナット幅はネックの幅を表していて、幅の広さは演奏性に大きく影響するんだよ
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たけしゃん

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アコギのナット

アコギのナット

ギターのナットはギターヘッドとネックの間に付けられたパーツです。

素材はプラスチック、牛骨、TASQなどが用いられます。

アコースティックギター用ナット GRAPHTECH-PQ180100
TASQは人工素材で最近のギターでよく使われている

ナットは音に影響を与えるパーツなので、素材を変えるとギターの音が少し変化します。

また、ナットの幅や溝の間隔は各ギターメーカー毎に仕様が異なります。

ナット幅

特にナット幅はギターの演奏性に大きく関わるものなので、ギターを選ぶ際の重要なポイントとなります。

ここからはアコギのナット幅について掘り下げて解説していきます。

 

アコギのナット幅

ギターをチューニングしているところ2

アコギのナット幅はギターによって異なりますが、ナット幅によって主に下記のような違いがあります。

ナット幅が狭い
ナット幅が広い
  • セーハが楽
  • 親指押弦が楽
  • 指弾きはやや辛い
  • セーハが大変
  • 親指押弦が辛い
  • 指弾きがやりやすい

ナット幅が狭いと押さえる面積が狭くなるため、セーハ系のフォームが押さえやすいです。

Fm9のギターコードフォームを押さえている写真
1本の指で複数弦を押さえるのがセーハ

これはナット幅が異なるギターを弾き比べて見ると、明らかに押さえやすいのがわかるレベルです。

また、親指を使って6弦を押さえる場合もナット幅が狭いほうが楽です。

Gmaj9のギターコードフォームを押さえている写真

そのため、ストローク中心のギターボーカルの方はナット幅が狭いギターを好む傾向にありますね。

対して、ナット幅が狭いと弦と弦の間隔が狭くなります。

ナット幅が狭いギターは弦と弦の間隔が狭い

そのため、ジャズコードなど指を4本使って押さえるようなフォームだと、窮屈に感じます。

Dmaj9のギターコードフォームを押さえている写真2
Dmaj9のフォーム

また、右手も高速なアルペジオでは弦の間隔が狭いと演奏しにくいです。

なので、フィンガースタイルが中心の方はナット幅が広いギターを好む傾向にありますね。

ちなみにフィンガースタイルが前提のクラシックギターは通常のアコギと比べてナット幅がかなり広いです。

クラシックギター
標準的なナット幅の違い

アコギは43~44mm前後、クラシックギターは52mm程度が多い

つまりは演奏スタイルによって、最適なナット幅は変わるということです。

ギターボーカル同士で話していると、ナット幅は狭いほうが良いと思いがちですが、そうでもないわけですね。

アコギの標準的なナット幅

Gibson J-45
ナット幅数値
狭め42mm程度
標準43mm前後
広め44.5mm程度

アコギのナット幅の標準値は43mm前後です。

正確にはMartinが採用している42.9mmが最も一般的ですね。

Martin DX1 全体
補足

Martin公式はインチ表記で「1 11/16”」。mmに変換すると約42.9mmとなる

ちなみにMartinは1 3/4″(44.5mm)のギターが主流です。

ただ、日本人だと44.5mmは広くて押さえづらいと感じる人も多く、42.9mmを選択する人が多いですね。

Taylor 814ce
僕の家のTaylor 814ceは44.5mm

続いて、大手楽器メーカーの標準的なナット幅を表にしたので見てみましょう。

メーカーナット幅
Martin42.9mm、44.5mm
Gibson43.8mm
Taylor42.9mm、44.5mm
YAMAHA43mm、44mm
補足

上表は一般的なナット幅です。製造年代や製品によって仕様は異なります

43mm前後、44mm前後のツーラインナップ用意しているメーカーが多いですね。

弾き語りやギターボーカルの方はまずは43mm前後のアコギをおすすめします。

YAMAHA FG820
初心者向けのYAMAHA FG820は43mm

44mmだとセーハが押さえづらいと感じる人は割と多いです。

逆にフィンガースタイル中心の方は44mm前後のギターを試してみると良いでしょう。

ネックの厚みや加工処理も弾きやすさに関係する

Fender CC-60S Concertのネック背面

ギターの押さえやすさはナット幅以外にネックの厚みや加工も関係してきます。

最近よくある、初心者向けに特化したギターはネックが薄めになっていたり、滑らかな加工が施されています。

例えば、YAMAHA STORIAは細めのナット幅に滑らかなネックエッジにして、押さえやすくしています。

YAMAHA STORIAⅠ
YAMAHA STORIAのギターヘッド
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また、Fender CC-60Sはフィンガーボード・エッジに滑らかなロールオフ加工を施した「Easy to Playネック」を採用しています。

Fender CC-60S Concert

最近では、ネックを加工して握りやすくしたギターが増えてきています。

逆にビンテージのGibsonなどはナット幅は狭めでも、ネックが丸太のように厚いギターもあったりします。

Gibson J-45

そのため、現物を握ってみないとわからないことも多いです。

最近のギターでネックが分厚いものはなかなかないですが、ナット幅だけで判断するのはやや危険ですね。

ナローネック

アコースティックギターのネック部分を横から撮った

ナローネックはナット幅が狭いギターを指します。

代表的なナローネックギターは1965年~1969年に作られた一部のGibsonギターです。

上記時期に作られたGibsonのギターはナット幅が39mm~40mmとかなり細くなっています。

アコースティックギターのネック部分を斜め横から撮った
補足

通常のGibson J-45はナット幅43.8mmです

実際に握ってみると、ものすごく細く感じますね。

有名アーティストだと秦基博さんが使用している1967年製のGibson J-45が39mmのナローネック仕様ですね。

そのため、秦基博さんは親指で6弦を押さえることが非常に多いです。

44.5mmのギターでは同じようにプレイするのは結構厳しいですね。

ちなみにGibsonは定期的に1960年代の復刻版ギターを製造・販売しています。

Gibson J-45
僕のJ-45も1960’s復刻版です
補足

1960’s復刻版でもナローネックではないギターもたくさんあるので仕様書はちゃんと見ましょう

なので、市場を探せば意外と見つかりますね。

 

アコギのナット幅 まとめ

Gibson ES-335にエレキギターの弦を張った
  • ナット幅はネック幅の指標となる数値
  • ギターボーカルは狭め、フィンガーピッカーは広めを好む傾向にある
  • 最近はネックを加工して押さえやすくしたギターがある

ぎたすけ

ナローネックってGibsonしかないの?安いギターだとない感じ?

たけしゃん

あんまりないね。ナローネックはクセもあるから、ネックを滑らかに加工したギターを探すほうが良いよ

アコギのナット幅についての解説でした!

目安的なものですが、下記を参考にギターを選ぶといいかと思います。

プレイスタイルおすすめのナット幅
ストローク中心43mm前後
フィンガー中心44mm前後
どちらとも言えない43mm前後

ギターボーカルの方であれば、まずは43mm前後のギターを選択するのが良いかなと感じます。

また、弾きやすさはナット幅だけでなく、弦高なども大きく影響します。

現在のギターが弾きにくいと感じる場合は弦高のセッティングなども見直しましょう。

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