Martin(マーチン) D-28とはどんなギターなのか?年代別にD-28の仕様を解説 -有名アコギ解説シリーズー

Martin D-28 解説

ぎたすけ

アコースティックギターの解説か。Martin D-28といえばアコギの王道って感じだな!

たけしゃん

Martinの中でもD-28は昔からの有名アコギだからねぇ。D-28で作られた名曲がどれだけあることやら…

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たけしゃん

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ギター弾き語りのシンガーソングライター。長年の音楽活動や音楽の仕事で得た知識・経験を基にブログを書いています。
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Martin(マーチン) D-28

1931年に製造開始された、Martin D-28

当初は12フレットジョイントで製造されており、1934年から14フレットジョイントのものが製造され始めました。

フレットジョイント
フレットとボディ上部が重なる位置のこと。ドレッドノートは14フレットジョイントが多い

Gibson J-45が発売されたのが1942年なので、Martin D-28は10年以上前に登場したわけですね。

 

D-28というと弾き手も聴き手も心地よくなる、自然で豊かな音の響き。

サイド&バックの上質なローズウッドが高音を伸びやかにして、低~高音までバランス取れた音質はソロギターでも弾き語りでも何でも相性良くこなします。

 

そんな、多数のプレイヤーを魅了するD-28の仕様について、まずは2019年3月現在に公式HPで紹介されているスペックを解説していきます。

Martin(マーチン) D-28 ボディの形状

  • 全長 40.25インチ
  • スケール長 25.4インチ
  • ボディ幅 15.6インチ
  • ボディ長 20インチ
  • ナット幅 42.8mm

(参考)ギターの寸法用語

ギターの寸法用語

D-28はアコースティックギターの標準ともいえる、Martin伝統の14フレットジョイントのドレッドノート。

Gibson J-45と比べるとスケール長が若干長く、全長は若干短い程度でほぼ同じサイズ感です。

 

ドレッドノートは低音が力強く、生音の音量が出るボディサイズ。

弾き語りから、バンドのボーカルギター、ソロギターまで何でもこなす万能選手です。

Martin(マーチン) D-28 木材

  • トップ材:シトカスプルース
  • サイド&バック:イースト・インディアンローズウッド
  • ネック:セレクトハードウッド
  • フィンガーボード:エボニー
  • フィニッシュ:グロス

ネックのセレクトハードウッドは中身が何かは非公開のようです。

以前はネックにマホガニーが使われていました。

マホガニー自体の供給が足りないので、マホガニーの他にシダーなどの木材も組み合わせてるため、セレクトという表記になったと…某マーチン専門店の方から聞きました。

 

そして、D-28といえば、トップ:シトカスプルース × サイド&バック:インディアンローズウッドの組み合わせ。

高音の伸びが良く、1弦~6弦を一気に鳴らした時の音のバランスと響きが心地良いのが特徴です。

僕もスプルース×ローズウッドのTaylor 814ceをメインギターとして使っていますが、この木材の組み合わせは良いですねぇ。

ピックアップ

ピックアップは標準ではついていません。

オプションでMartinとFishmanが共同開発した、MARTIN Thinline 332+Plusが付いたモデルも選択できます。

ピエゾタイプのピックアップで音はおとなしめです。

弾き語りで使うなら、ピックアップ非搭載モデルを買ってデュアルピックアップを後付けしたほうが使いやすくはありますね。

 

Martin(マーチン) D-28 年代別の変化

時計

たけしゃん

D-28は時代毎の違いが色々とあります。そして色んな年代のギターが市場に出てますね

1931年から製造されているので、歴史が長いMartin D-28

本章では1930年代~1970年代あたりを中心に主な時代ごとの仕様を解説していきます。

 

D-28は比較的、色んな年代のヴィンテージギターが市場に出回っています。

なので、時代ごとの違いがわかるとギター選びをより楽しむことができます。

1930年代

  • トップ材:アディロンダック・スプルース
  • サイド&バック:ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)

1931年に12フレットジョイントのD-28が製造開始され、1930年代は徐々に仕様が変化していきます。

1930年代の主な仕様変化

  • 1934年…14フレットジョイントになる
  • 1938年…トップ・プレート・ブレース(トップ裏側の補強板)がつく
  • 1939年…Xブレーシングのクロス位置がホールから遠くなる
  • 1939年…ナット幅が44.5mmから43mmになる

…と徐々に変わっていきます。

1930年代のヴィンテージものはさすがに少なく、市場で見るのは1937年のレプリカモデルであるMartin D-28 Authentic 1937 Authentic

限定50本で作られた限定版なので、100万円以上することがほとんどです。

 

1930年代はMartinがGolden Era(黄金時代)と呼んでいるそうですが、それだけ質が高いギターが多かったそうです。

この時代のD-28は売られていても、ショーケースに入っていたりするので中々試し弾きする勇気が出ないですね(笑)。

1940年代

  • トップ材:アディロンダック・スプルース
  • サイド&バック:ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)

第二次世界大戦中の1940年代。

金属の供給が不足し、ギターの仕様が変更を余儀なくされた時代ですね。

この時代の主な使用変更はこちら。

1940年代の主な仕様変化

  • 1942年…ネック補強材がスティールからエボニーに変わる
  • 1944年…ブレイシングがスキャロップドからノンスキャロップドに変わる
  • 1946年…トップ材のスプルースがアディロンダックからシトカに変わる
  • 1946年…ネック補強材がスティールに戻る
  • 1946年…指板、ブリッジがエボニーからハカランダに変わる
  • 1947年…バックの模様がジグザグからチェックに変わる

見てわかり辛い仕様変更ばかりですね。

1947年のバックの模様の変更はギターボディのバック中央にある縦線の模様です。

D-28 Back

1944年の仕様変更であるブレイシングがスキャロップドからノンスキャロップドへの変更は1950年代後半にGibsonも取り入れてる変更です。

スキャロップド・ブレイシング
ボディ内部の木材を波状に切り取り軽量化・響きやすくしたもの。ノンスキャロップドは通常の真っ直ぐなブレイシング

よく言われるのはスキャロップドは最初から鳴りがよく、ノンスキャロップドは弾き込むうちに鳴りが良く鳴る…という説。

ヴィンテージギターだと、どちらでも弾いていて差は感じないですね。

 

1940年代のD-28も市場で見ることは少なく、あっても100万円以上のものが多いです。

市場で見ることがあるのは1941年仕様のレプリカモデル、Martin D-28 Authentic 1941ですね。

Martin 博物館に保管されている1941年製 D-28を基に作られており、トップ:アディロンダック・スプルース、サイド&バック:マダガスカル・ローズウッドで作られています。

1950年代

  • トップ材:シトカ・スプルース
  • サイド&バック:ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)

1950年代はアメリカでロックスターが活躍する時代。

D-28を演奏するエルヴィス・プレスリーが象徴的ですが、たくさんロックスターがD-28を使用していました。

 

1950年代のD-28は仕様変更も少なく、安定した品質で供給されていた時代でした。

この時代にピックアップ搭載のエレアコ仕様になったD-28Eや1931年当初の12フレットジョイントのD-28なども作られました。

 

1946年後半に指板・ブリッジがエボニーからハカランダに変わり、1950年代のD-28はハカランダ仕様が中心となっています。

ハカランダの指板・ブリッジは音が軽快で明るく、ギター全体でハカランダの木目が出た渋いルックスで今でもヴィンテージ市場で人気がある時代のギターです。

【中古】Martin D-28 ~Brazilian Rosewood~ 1956年製

1960年代

  • トップ材:シトカ・スプルース
  • サイド&バック:ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)

1960年代はフォーク・ブルーグラスブームがきている時代。

D-28が最も色んなアーティストに使用されていた時代と言われています。

また、The Beatlesのポール・マッカトニーがD-28を使用しており、D-28の知名度が更に高くなった時代ですね。

 

1950年代から大きな仕様変更もなく、1960年代後半まで細かい仕様変更がなされていきます。

1960年代の主な仕様変化

  • 1964年…ブリッジピンの位置が1.6mm後方へ移動
  • 1965年…サドルの長さが短くなる
  • 1966年…ピックガードがべっ甲柄から黒に変わる
  • 1967年…ネック補強材がTバーからスクウェアロッドに変わる
  • 1968年…ブリッジプレートがメイプルからローズウッドに変わる
  • 1969年…サイド&バック材がハカランダからインディアン・ローズウッドに変わる

最も大きな変化は1969年のサイド&バック材の変更。

ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)が木材輸出制限で供給されなくなったため、インディアン・ローズウッドに変わります。

 

現在ではハカランダは貴重で手に入らない木材になっています。

よって、ヴィンテージ市場でもサイド&バック材がハカランダのD-28は非常に高額。

逆に1970年代製のD-28はインディアン・ローズウッドなこともあり、一気に値段が下がります。

 

確かに箱鳴りした時の響きがハカランダは豊かです。

プロアーティストでも使用者が多いのは1960年代のD-28なので憧れのギターでもありますね。

1970年代

  • トップ材:シトカ・スプルース
  • サイド&バック:インディアン・ローズウッド

1970年代のD-28はサイド&バック材がインディアン・ローズウッドに変わります。

それ以外の仕様変更としてはブリッジのサイズがやや大きくなった点、1975年からナット・サドルの材がミカルタに変更されたことです。

 

現在のヴィンテージ市場だと、どうしても1960年代以前のD-28よりも低く評価されがち。

ですが、プロアーティストでも使っている人もいますし、弾いてみても鳴りも悪くないんですけどね。

虹が消えた日(LIVE)/秦基博(YouTube)

 

上の動画は1974年製のD-28で弾き語りする秦基博さんです。

良い感じにバランス良く鳴っています。

秦さん的にはキレイすぎて、荒々しいGibsonのほうが良いらしく、最近では見かけなくなりました。

 

1970年代のD-28は30万円台で買えるものが多いので、鳴りが良いのを見つけられると掘り出し物感があります。

【中古】 C.F.Martin / D-28 1973年製

その他(HD-28について)

D-28とは別にHDシリーズというシリーズが存在し、HD-28という型番のギターがあります。

  • トップ材:シトカ・スプルース
  • サイド&バック:インディアン・ローズウッド
  • スキャロップド・ブレーシングを採用

HDシリーズは1973年から製造され始めた、Martinのヴィンテージギターを意識して作られたシリーズ。

HD-28は昔のD-28の仕様を意識して作られているわけですね。

 

ブレーシングも1943年まで採用されていたスキャロップド・ブレーシングを用いています。

スキャロップド・ブレイシング
ボディ内部の木材を波状に切り取り軽量化・響きやすくしたもの。ノンスキャロップドは通常の真っ直ぐなブレイシング

スキャロップド・ブレーシングは一般的には新品でも鳴りが良いギターと言われています。

 

Martinのヴィンテージギターは高すぎて手が出せない…という方はHD-28を買って弾き込んで、自分で育てていく…という楽しみ方も良いのではないでしょうか。

 

Martin(マーチン)D-28の相場価格

お札

参考ですが、Martin D-28のよくある相場価格を年代別でざっくり書くと…。

D-28の年代別 ザックリな金額間

こんなところですね。

1960年代以前はサイド&バックにブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)を使っているため、急激に価格が上がります。

 

割とねらい目なのが1970年代のD-28。

木材がインディアン・ローズウッドに変わることで価格も急激に落ちますが、当たりのギターは価格の割にすごく鳴ります。

Martin D-28 買取相場価格

普通のD-28(2017年以降のモデル)

  • 良品(ちょい傷程度)…13万円程度
  • 並品(汚れ・傷あり)…11万円程度
補足
個体差が大きいので、正確な価格は無料買取査定で確認しましょう

D-28はザ・アコースティックギターともいえるほどの有名ギター。

そのため、買取価格も高めに設定されています。同価格帯のギターだと並品で8~9万円くらいが普通ですからね。

 

また、買取強化品に指定されやすく買取価格がアップされることも多いです。

さらに売却時の価格交渉もしやすい…とトップレベルに売却しやすいアコギです。

 

一生もの!と意気込んで買う人が多いギターではありますが、売却時に価格が付きやすいので買った後に他のギターが欲しくなった場合も楽なのがD-28の強みなんですよね。

最短30分で現金化

 出張・宅配・店頭を選択可能

 

Martin D-28 使用のプロアーティスト

D-28の使用者

  • 押尾コータロー
  • 草野マサムネ(SPITZ)
  • 桜井和寿(Mr.Children)
  • ジェニ・ミッチェル
  • ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)
  • 清水 依与吏(back number)
  • 曾我部恵一
  • ニール・ヤング
  • 秦基博
  • ポール・マッカートニー
  • 山本彩
  • YUI
  • 和田昌(トライセラトップス)

ミスチルの櫻井さんとスピッツの草野マサムネさんが使っている時点で、D-28の音を聴いたことない人はほとんどいないのでないか(笑)。

HANABI(LIVE)/Mr.children(YouTube)

 

桜井さんはレスターフラット仕様のラージピックガードが特徴的なD-28を使用されています。

ピックアップにはL.R.Baggs Anthemを搭載しています。

ライブでよく見るギターですね。

 

ちなみに…D-28に1965年まで採用されているロングサドルが載っているモデルはサドルを換装しないとL.R.Baggs Anthemは載せられません。

ロングサドルに対応するワイドピックアップを用意しているFISHMANのEllipse Matrix Blendなどを検討すると良いでしょう。

 

しかしまあ、こうやってD-28を使用しているアーティストを見てみると、名だたるアーティストが使ってますね。

憧れのギターと言われるのも頷けますね。

 

Martin(マーチン) D-28を解説して

内容をまとめたノート

ぎたすけ

D-28って年代によって、何でこんなに値段かわるんだろ?って思ったけど木材なんだな

たけしゃん

そうそう。ハカランダが使われていると、プレミア感がすごくて値段が何倍になっちゃうんだよね

Martin D-28の解説でした!

改めて、ザックリの年代ごとに市場でよくある金額間を乗せると…。

D-28の年代別 ザックリな金額間

ハカランダが使用されている1960年代以前のD-28は一気に高くなります。

 

しかも、ハカランダ仕様のギターはどんどん値段が上がっていく気がします。

現実的に買えるものを…と考えるなら1970年代 D-28を買うか、新品のD-28を買って弾き込んで育てるか?の二択ですかね。

新品を買って弾き込んで育てるっていう選択肢は楽しそうですよね。

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